
院長コラム
column
【頚椎脊柱管狭窄症】
頚椎の脊柱管狭窄症は大きく分けて2つのタイプに分かれます。
1つは生まれつきに脊柱管が狭いという先天的な要因が考えられています。
何故ならば この病気は欧米人に比べて日本人や東南アジア人種に多く見られます。
つまり、この病気の発生頻度には人種間に差があるからです。
このタイプでは20代という若さで病気になる人も珍しくありません。
もう1つは経年変化によるもので頚椎症性脊髄症と言われます。
人間の首は歳と共に骨の角にトゲが出来たり骨と骨の間にある椎間板が潰れて周りに膨らみます。
このトゲや周りに膨らんだ椎間板が脊柱管を塞いでしまう状態、これが頚椎症性脊髄症です。
この病気は中高年に圧倒的に多く見られます。
頚椎症性脊髄症の多くの例では、先天性と加齢による変性という2つの原因が同時に起きています。
症状は手と足の痺れ、あるいは脱力が主なものです。
これは症状の重い側と軽い側があっても、両方に出やすい病気です。
痺れが高じてくると指先がこわばって細かい指の動作が不自由になります。
例えば字を書いたりお金を数えたり、テーブルの上のコインを拾ったり、お箸やボタンの留め外しといった作業がとても不自由になってきます。
足にも力が入らなくなるために、歩くのが不安定になったり、階段を降りるのが不安になって、今まで使わなかった手すりを使うようになったりします。
さらに症状がどんどん進んでいくと、排尿や排便といった排泄の障害もおきます。
また この病気の特徴として、上や下を向き続けていると両手や腕に痺れが強く出ます。
これは、その様な姿勢とると、さらに脊柱管が狭くなり、脊柱管の中で神経の本幹が締め付けられるからです。
ここで、頚椎の脊柱管が非常に狭い人に特に注意して欲しいことがあります。
それは、転んだり頭をぶつけたりして首の骨に強い衝撃を受けると、その中を通る神経の本幹が容易に傷ついてしまい易いということです。
これを脊髄損傷といいます。
脊髄が損傷されると 手や足が一生思う様に動かせなくなる様なことも起きます。
実際私は脊椎外科医としての経験の中でこのような例を少なからず目にしました。
ご高齢の方が歩いていて突然転んでしまい、中々立ち上がれないので助けてあげようとして近寄ったら、
自分で手も足も動かせない状態になっていました。
慌てて病院に連れて行って調べてもらったら首が酷く狭窄していたのです。
また、若い人の例では30代の方がラグビーをしていて相手の猛烈なタックルを受けて激しく転んでから、なかなか起き上がれません。
こちらも病院に急いで連れて行って調べてみたら脊柱管が酷く狭窄していたのです。
脊柱管が狭窄している事が初めから分かっていれば、この様な悲惨な例は防げたかもしれません。
例えば高齢者なら杖を使ったり、階段の手すりを使う様にする事が出来たと思います。
また若い人であれば、自分には脊柱管狭窄症があるから危険なスポーツは趣味にしなかったかもしれません。
診断には頚椎のMRIがとても役に立ちます。
頚椎脊柱管狭窄症と良く似た症状を出す病気には頚椎後縦靭帯骨化症、頚椎椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍などがあります。
この中で頚椎後縦靭帯骨化症という病気は、脊柱管の中にある靭帯が厚くなって骨になり、
この骨が脊柱管を塞ぐ為に中を通る神経の本幹が締め付けられて症状が出る病気です。
この病気はやはり欧米人種に少なく日本人や東南アジア人種に多いことから、遺伝的な原因が考えられています。
頚椎脊柱管狭窄症の治療は症状の重い軽いによって様々あります。
こちらはホームページの症状一覧の中に書いておきました。
是非こちらをご覧になって参考にしてください。
動画でご覧になりたい方はこちらへ