頚椎後縦靱帯骨化症、胸椎黄色靭帯骨化症

JINTAIKOKKASHOU

頚椎後縦靭帯骨化症

後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)とは

正常では厚みが2mm程度の首の靭帯が何倍も分厚い骨に変化してしまう病気です。多くは成人以降の頚椎と胸椎で起きます。これによる最も深刻な問題は、この靭帯が脊柱管(せきちゅうかん)という神経の本幹(脊髄:せきずい)が通るトンネルの中にあるため、分厚い骨になったこの靭帯が脊髄を圧迫してしまうことです。
この病気の好発年齢は中年以降で30歳未満にはまれです。

原因

この病気は日本人をはじめ、東南アジア人種に多く、白人種には珍しい病気です。人種間に発症頻度の差があるため、遺伝的要素も原因の一つとして考えられています。

頚椎後縦靭帯骨化症の症状

脊髄が圧迫されれば、手足がしびれて感覚が鈍くなり、手足を思うように動かせなくなってしまう「麻痺:まひ」が起きます。

症状が悪化すれば、排尿排便の機能も障害されます。

また、頸椎脊柱管狭窄症のページでも説明しましたが、よくある悲惨な例として、不自由な足で歩いていたら転んでしまい、骨になった靭帯によって圧迫されていた脊髄が転んだ衝撃でさらにつぶされて、手足が動かなくなってしまうことがあります。

この病気はとても皮肉なことに、生まれつき首の脊柱管が狭い我々アジア人種に多く見られる病気です。

もともと狭い脊柱管の中を、さらに厚みが増した靭帯が骨になって脊柱管を塞いでしまうため、この病気による脊髄の圧迫も非常に強くなることが多く、症状も重症化しやすいと言えます。

もう一つの症状は、本来は伸び縮みする靭帯が骨になってしまうため、首が固い棒のようになって動きが悪くなることです。

診断

レントゲン、CT、MRIなどの画像検査が診断の決め手です。

画像1と2では厚く骨になった靭帯が脊髄を強く圧迫し、脊髄は平べったく変形しています。

頚椎後縦靭帯骨化症の縦切り断面
水平断面の頚椎後縦靭帯骨化症

治療

MRIなどの画像で骨化した靭帯によって脊髄が圧迫され変形していても、手足のしびれや麻痺がなければ定期的にMRI検査をしながら経過観察することが多いのですが、外傷などによる首への衝撃で脊髄が損傷され、取り返しのつかない状況になる可能性は常にあります。

脊髄の圧迫が明らかであれば症状がなかったり軽かったりしても決して安心できないことを認識すべきです。

手足のしびれや運動麻痺、排尿障害などがあり、時間とともにそれらの症状が進行するようであれば手術が適応となります。

手術の方法や実例は「患者さんの声」の欄を参照してください。