頚髄腫瘍(砂時計腫を含む)

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頚髄腫瘍とは

白石脊椎クリニック患者の頚髄腫瘍画像01

神経の本幹である脊髄は頭に近い方から頚髄(けいずい)、胸髄(きょうずい)、腰髄(ようずい)と呼ばれる3つの部分からできています。
脊髄は脊柱管(背骨のトンネル)中で硬膜(こうまく)というチューブ状の膜に包まれています。脊柱管の中にできた腫瘍のうち硬膜の外に出来た腫瘍を硬膜外腫瘍、その内側の腫瘍を硬膜内腫瘍と呼びます(図1)。

硬膜外腫瘍の多くは、癌が脊柱管内の組織に転移してできた転移性硬膜外腫瘍です。
一方、硬膜内腫瘍のうち、最も多いのが脊髄の外側に出来た硬膜内髄外腫瘍で、ほとんどが良性腫瘍です。脊髄の内側のものを髄内腫瘍とよびます。
ここでは主に硬膜内髄外腫瘍について詳しく述べます。

症状

頚髄に出来た硬膜内髄外腫瘍は神経の本幹を圧迫して体幹から両手足にしびれ、感覚の麻痺、および筋力の低下や排泄の障害などの麻痺症状を起こします。

診断

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MRI検査が体の負担がなく、最も診断に役立つ検査法です。腫瘍の種類や広がりを確かめるために、造影MRIが行われます。また、脊髄造影CT検査は手術法の詳細な検討に欠かせません(図2,3,4,5)。

予防と治療

硬膜内髄外腫瘍は良性であることがほとんどなので、腫瘍が小さく、症状が軽くて日常生活に支障がなければ定期的に画像検査と診察を受けて経過を観察します。
年齢が高ければ手術をしないで天寿を全うできることも珍しくありません。
しかし、症状が重く、将来も症状が進行していくことが予測されれば、手術による腫瘍の切除が必要です。

私が脊髄腫瘍に対して行う手術法

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私はこれまで脊髄腫瘍および馬尾腫瘍のほとんどすべてを、背骨の後ろの片側半分しか開かずに切除してきました(図6)。
すべての手術の教科書では椎弓切除といって、背骨の後側を左右とも広く切り取って腫瘍を切除するように指導しています。

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しかし、腫瘍が上下に長い範囲に出来た場合、この方法では骨を切り取る範囲が広く、背骨を支える筋肉の損傷もそれに応じて大きくなるため、背骨の支柱としての構造が非常に弱くなります(図7)。
特に若い患者さんの脊髄腫瘍に対して通常の手術を行えば、変形が高率に(25~100%)起こることが報告されています。
このような手術による背骨の変形を防ぐ目的で、高価な金属を広範囲に使って背骨を固定する手術が追加されることも多くなっています。
少し前まではアメリカや中国にこの傾向が強かったのですが、最近では日本やアジア諸国を含め世界的な傾向となりつつあります。
これでは手術による体への負担、術後感染のリスク増大、退院や社会復帰の遅れ、医療費の高額化などの問題がつぎからつぎへと湧き起ってきます。

私の筋肉を傷めない手術法では背骨の支柱としての構造が損なわれにくいため、金属による背骨の固定術を追加する必要はありません
手術の翌日からカラーをつけずに離床します。
これによって体への負担が軽減され、傷の痛みも少なく、退院、社会復帰までの期間が大幅に短縮されます。