院長コラム

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【白石脊椎クリニックのセカンドオピニオンについて】

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セカンドオピニオンと言ってもそれがどんなものか知らない方も多くいらっしゃると思います。

そこで、ここでは出来る限り具体的に説明をしていきたいと思います。

セカンドオピニオン外来で1番多い質問は背骨の手術に関することです。

背骨の手術はどのようなタイミングで、どのような手術をするか、が一番大事です。

これを決めるのに脊椎外科医は教科書を参考にします。

「手足の麻痺が酷くなって通常の日常生活もまともに送れなくなったら手術が必要だ。」と書いてあります。

ところが実際の治療現場では大きな混乱があります。
 
 
1人の患者様にある外科医は「すぐに手術が必要だ。」と言います。

別の外科医は「手術は当分必要ない。一生手術をしないで済むかもしれない。」と言います。

またその手術にしても ある外科医は「前から手術をすべきだ。」

別の外科医は「後ろからだ。」と言います。

更には「金属を入れて背骨を固定する必要がある。」という医師もいれば

「それが必要ない。」という医師もいます。

それでは何故このような混乱が起きるのでしょうか?

その決定は一人一人の医師の経験と技量に大きく左右されるからです。
 
 
私のクリニックに頚椎症性脊髄症と診断された患者様が相談にみえました。

かかりつけの先生に「すぐに手術が必要だ。」と言われたそうです。

どのような手術かといいますと

「首を後ろと前の両方から手術して金属で首の骨を固定する必要がある。」

「これが今の手術のスタンダードだ。」

と言われたそうです。

実際私がこの患者様を診察してみましたが、

手足の麻痺の程度は軽く、MRIでは脊柱管狭窄はそれほど酷くないので

私の経験からはこの患者様は今すぐ手術が必要だとは到底思えませんでした。
 
 
 
また、これとは逆のケースもあります。

診断は頚部脊柱管狭窄症でした。

この患者様は両手が軽く痺れる程度でしたけれど、3カ月~半年の短い期間で痺れがどんどん強くなり

結局、箸を持ったりボタンを留め外しすることがとても不自由になりました。

おまけに家族から「歩いているとフラフラして見えるよ?」

と指摘されるようになりました。
 
 
患者さんは心配になって、かかりつけの先生に

「このままリハビリや薬を続けていくことだけで大丈夫でしょうか?」

と聞いたところ

「首の手術はとても危険だし、

手術後、首の変形や強い首の痛みや肩こりに悩まされる人が非常に多いから

手術は箸が持てなくなったり、歩けなくなってからやりましょう。」

と言われたそうです。
 
 
私の診察結果は、この先生とは全く逆のことでした。

MRIでは首の狭窄がとても酷く、神経が潰されていました。

また、弱った足で歩く訳ですから、今にも転びそうな不安定な歩き方でした。

私はこの方にはすぐにでも手術してあげたいと考えました。

もし脊柱管狭窄の程度が酷い人が転んでしまえば、そうでない人が転ぶのとは訳が違います。

どんなことが起こるかと言いますと、一生手足が思う様に動かなくなることまで起こるのです。

また、こうなってからでは手術は遅すぎるのです。

神経が元に戻らないからです。
 
 
ではどうして必要な手術を躊躇うのでしょうか?

それは手術のデメリットがメリットよりも大きいと考えるからです。

このようにセカンドオピニオンというものはひとえに、それを提供する医師の経験が大きくものを言います。

この経験に加え 手術のデメリットを無くすために手術に工夫を加え、

改良を加えながら実践していく、高い技術力が要求されます。

更に、患者さんが必要とあればいつでもデメリットの最小限で、

最大の効果を発揮できる手術を提供できるという、自信に裏打ちされたものでなければなりません。

 
 
 
<解説>

頚椎症性脊髄症
背骨は年とともに、変性と言って骨の角がとげ状に突出したり、椎間板がつぶれてはみ出たり、背骨を支える靭帯が厚く硬くなったりする。
これらが神経の本幹である脊髄を圧迫することによって、四肢(両方の手脚)に痛みやしびれ、運動障害を生じる病気が頚椎症性脊髄症である。

頚部脊柱管狭窄症
背骨の中には脊髄が通っており、その脊髄が通るトンネル(管)のことを脊柱管と呼ぶ。
脊柱管が加齢による変性や先天的な原因で狭くなった状態を脊柱管狭窄症と呼び、これが首に起こるのが頚部脊柱管狭窄症である。
症状は狭くなった脊柱管の中で脊髄が圧迫されて起こるため、頚椎症性脊髄症とほとんど同じである。