院長コラム

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私が脊椎ドックをすすめる理由

脊椎ドックを受けるメリットは早期発見・早期治療です。

健康を保つためには、病気をできる限り早く発見し、できる限り早く治療を始めることが最善の策です。

背骨の病気とて例外ではありません。

私は脊椎外科医として30年以上にわたり患者さんを治療してきました。

この経験を通していつも残念に思うことがあります。

それは、本人が知らないうちに病気が進行していて、症状を自覚するようになって外来を初診した時には、すでにわずかな治療の選択肢しか残されていない患者さんが多いことです。

その中には、今現在の症状を治すことはとても無理であり、症状の進行を食い止めるだけの治療しか選べない患者さん、あるいは、体への負担が非常に大きな手術しかしてあげられない患者さんも含まれます。

しかし、脊椎の病気は、本人が症状を自覚しないうちでも、診察や画像検査によって予測ができるものが多いのです。

予測ができれば、患者さんにとって治療の選択肢は多く残され、たとえ手術が必要でも、体への負担がより少ない手術が選べるのです。

そのような背骨の病気を挙げてみましょう。

1.脊椎全体では

骨粗しょう症、骨粗しょう症による脊椎椎体骨折、脊椎の先天奇形、変形、脊髄腫瘍(脊髄という神経の本幹にできた腫瘍でも小さなうちは症状がありません。)

2・頚椎
頚椎症、首下がり、頚椎後縦靱帯骨化症、先天性あるいは後天性脊柱管狭窄症

3.胸椎
黄色靭帯や後縦靱帯の靭帯骨化症

4.腰椎
腰部脊柱管狭窄症、腰椎分離症、腰椎変性すべり症

などが代表的なものです。

これから、この中でも特に頻度の多い疾患に絞って解説して参ります。

今回は骨粗しょう症についてです。

 

骨粗しょう症とは骨の強度が低下して背骨や手足の骨が折れやすくなった状態を言います。

我が国の統計では40歳以上の人が骨粗しょう症になっている率は男性で約12%、女性で約27%と報告されています。

以後加齢とともに有病率は上昇し、特に80歳以上の女性では半数以上が骨粗しょう症になっています。

骨粗しょう症による背骨の骨折では椎体という脊椎の前方部分が潰れます。

これが複数の椎体に起これば痛みのために立ったり歩いたりできなくなるばかりか、背中や腰が大きく前に曲がって胸やお腹が圧迫され、呼吸器や消化器にも問題が起きます。

また、閉塞性肺疾患、糖尿病、慢性腎臓病はさらに骨を折れやすくする危険因子とみなされています。

すでに脊椎が1つ以上折れている人がさらに新しい脊椎に骨折を起こす率は、初めて脊椎が骨折する率の何倍も高いことも知られています。

本人がほとんど痛みを自覚しないのに、すでに1つ以上の脊椎が折れている“いつのまにか骨折”と呼ばれるタイプがあるので、背骨の骨折を初めて診断されたときには、骨折の連鎖が起きていた、などということもあるのです。

もし、早期に骨密度を測定して骨粗しょう症の治療を開始していれば、このような骨折の連鎖は回避でき、骨折が原因で寝たきりになることもありません。

是非脊椎専門医による脊椎ドックで骨粗しょう症や椎体骨折の検査を受け、適切な治療や生活指導のアドバイスを受けておくことをお勧めします。