院長コラム

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【セカンドオピニオンで多い相談について】

最近私のセカンドオピニオンクリニックで増えている質問があります。

「かかりつけの先生から脊柱管狭窄症と診断されて手術が必要だと言われました。その手術には金具で背骨を固定する必要があると言われたけど、本当に金具が必要なのでしょうか?」
「金具を背骨に入れることのメリットとデメリットはどんなことがあるのですか?」
というものです。

背骨の病気には 確かに金具を入れなければ治らない病気もあります。
その代表は、腰では腰椎変性すべり症、首では環軸椎亜脱臼という病気があります。
脊椎変性すべり症
リウマチによる環軸椎亜脱臼
これらの病気に対する手術は、グラグラになった骨を固定して動かなくすることが目的ですから金具がとても役に立ちます。

しかし脊柱管狭窄症の手術の目的は、狭くなった脊柱管で神経が挟まれている神経を解放することが第1の目的であり、固定することではありません。

手術の方法を工夫すれば金属を使わなくても手術ができるのです。

では何故脊柱管狭窄症の手術に金具が必要になるのでしょうか。

それは現在の手術に問題があるのです。
頸椎脊柱管拡大術
頚部脊柱管狭窄症の手術には脊柱管拡大術あるいは椎弓形成術といって、椎弓という背骨の後ろの部分を広げる手術をします。
この時首の後ろにある筋肉や靭帯が全て骨から切り離されます。
頸椎後方の手術
この筋肉や靭帯の役目は、前弯といって首の自然なカーブ つまり前方に凸の弯曲を保つ役割があります。
手術でこの筋肉や靭帯が損傷されればその自然なカーブを保てなくなり
手術後に前弯が消失したり正常とは逆の後ろ凸のいわゆる後弯変形が起きることが多くあります。

この手術で金具を入れる目的はこのような変形を防ぐためなのです。

最近は背骨の病気がなくても首の病気がなくてもストレートネックや後弯になっている首の人が実は非常に多く見受けます。
首のカーブ
このような人が手術を受ければなおさら変形が出る可能性が高くなりその分金属を入れる手術の数が増えていくわけです。
頸椎椎弓形成術後に後弯が起きた例
もともとの後弯が術後さらに悪化した例
これとは逆に、このような大事な筋肉や靭帯を傷つけずに行える手術があるならば、金属を入れずに手術ができるようになるわけです。
 
 
 
<解説>

腰椎変性すべり症
加齢や、長い間腰に負担かかり続けたことなどによって、背骨を支える組織である椎間板、背骨の関節、靭帯などがすり減ってしまい、その結果、支えが弱くなって、腰骨が前後あるいは左右にずれてしまう病気。

環軸椎亜脱臼
首の1番目の骨(環椎)と2番目の骨(軸椎)がずれてしまい、頭や首をしっかりと支えることができなくなる病気。
この病気は環椎や軸椎を含めた首の骨の骨折や、環椎と軸椎を支える靭帯の断裂などの外傷、頭蓋骨と環軸椎の先天奇形、関節リウマチなどによっておこることが多い。

頚椎脊柱管拡大術と頚椎椎弓形成術
脊柱管拡大術とは文字通り神経の本幹(脊髄)の通り道である脊柱管を広げる手術で有り、広げる方法は、頚椎では現在そのほとんどが椎弓形成術によって行われている。
頚椎椎弓形成術には2種類あり、一つは片開き式拡大術、もう一つは両開き式拡大術と呼ばれている。
片開き式拡大術は、首の骨の後ろの部分である椎弓をドアーを開けるように片方に開き、両開き式は、これを観音開きに両側に開く術式である。
片開き式も両開き式も、狭くなっていた脊柱管を椎弓を開くことによって広げ、その中を通る脊髄を圧迫から開放することが目的である。
両方とも開いた椎弓を金具やセラミックを使って固定するのが一般的である。
 
 
 
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