院長コラム

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首の骨のカーブ あるべき自然な形 その2

※首の骨のカーブ あるべき自然な形 その1の記事はこちら

前回、正常の首のカーブはゆるやかに前に凸であることを説明しました。
ちなみに、前に凸を前弯、後ろに凸を後弯と呼びます。
このカーブは人が成長するにつれて次第に形成されて行きます。
赤ちゃんは生後3-4か月で首がすわります。
さらに成長を続けると約1年後には2本足で起立し、歩き始めます。
この頃に頚椎、胸椎、腰椎という人間の背骨のカーブは成人とほぼ同じになるのです。
正常では上から頚椎が前弯、胸椎が後弯、腰椎が前弯、その下の仙骨が後弯、と横から見るとS字状に見事なバランスが取れています。
このS字状カーブが重い頭を支えながら二本足で移動する人類に都合の良い形になっているのです。
骨の後ろ側には左右に関節があり、首の動きに伴ってこの関節も開いたり閉じたりします。
たとえば、首を前に倒せば関節が開き、首を後ろにそらせば関節は閉じます。
関節が緩みすぎて外れたりしないように歯止めをするのが関節包という強い靭帯です(図9)。

この靭帯が上下7つの首の骨を互いにしっかりつなぎとめているからこそ姿勢を保つことができるし、首を前に倒しても筋肉の力で元の正しい姿勢に戻すことができるのです。
従来の頚椎手術では椎弓を切り離して片方に開いたり観音開きにしたりして狭くなった脊柱管を広げるということをしてきました(図10)。

また、開いた椎弓のスペースを確保するために首の後ろの筋肉だけでなく関節包まですべて骨から剥がすということが行われています(図11abcd)。

さらに最近では開いておいた椎弓がふたたび閉じて脊髄を圧迫することがないように(図11ab)、金属のプレートや人工骨で固定する手術が盛んに行われています(図12ab)。

しかし、このプレートや人工骨を固定するためには首の後ろの筋肉をさらに広く骨から剥がさなければなりません(図13ab)。

従来法では手術によって首が前に倒れすぎることに歯止めをかける力が不足することになり、後弯の度合いが強くなってしまいます(図14,15,16,17)。

それに由来する様々な症状、頑固な肩こりや首の痛み、頭痛、首下がり、首を後ろに回せない、上を向きにくい、などが出現してしまうのです。
運動器に固定されたこの金属や人工骨などの異物は、そこで安定して役割を果たし続けると思いがちですが、実はそうでもありません。
何らかの力が加わると、骨から外れてしまうこともあるのです(図18abcd)。

それを予防するために、術後、ベッド上の安静期間を長くしたり、カラーを巻いて首の動きを制限したりします。
これでは後療法がとても煩雑となり、挙句に退院や社会復帰が遅くなり、特にスポーツの分野では、選手生命に関わることにもなりかねません。
私はこれらのことが従来法の大きな欠点だと思っています。
本来の身体が持つ筋肉、関節、靭帯の強さとしなやかさは、決して金属や人工骨で代替えできるものではないのです。